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「あの…、もし?ご気分でも悪くされましたでしょうか?」
丁寧な言い回しで、”THE・力尽きた人”にそっと尋ねてみる。
「う、う〜ん。いてて」
ああ、よかった。とりあえずは生きてた。
「どこか、おケガでも?」
「ふうー。大丈夫です。お気遣いすいません」
そう言いながら”THE・力尽きた人”は、片膝をつきゆっくりと立ち上がった。
「おっと」
ぐらっと身体がよろめいたところを、私は反射的に手を添えて支える格好となった。
自然な形で接近した彼の横顔。
切れ長の目元、青みを帯びた澄んだ瞳。
「お手間を取らせてしまって申し訳ない」
言葉使いや和装姿で、ぱっと見大人びているが、実際間近で見てみると幼さがまだ残る顔立ち。
こうして彼の身体を支えているうちに、私の鼓動は高鳴っていく。
「ちょっと間を置けば落ち着くと思いますので」
「じゃ、じゃあ…、そこでお休みになりますか?」
動揺を隠しつつ彼の手を取り慎重に、小高い山の斜面へと連れ立って向かった。
周囲は人気がなかったので、なるべく園道から見える位置にした。
これは私の無意識の防衛反射行動だった。
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