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待ちわびた夜、触れ合う期待
「……気持ちに変わりはないか?」
「はい、私もこの時を待ちわびておりました」
薄暗い室内に竜胆の硬い声が落ちる。初めての夜、初めての触れ合い。これからの時間に期待し、私の胸も高鳴っていた。
「松葉……」
優しく肩を押され、布団に倒れる。私に覆い被さる竜胆の目は熱っぽく、甘い。それを見た途端、胸を掻きむしりたくなるような衝動に襲われた。
「少しでも痛みがあれば言ってくれ。松葉を傷つけたくない儂のためでもある」
「……はい」
こんなに大事にされたことなんてなかった。こんなに大切に想ってくれる人ができるなんて、思ってもいなかった。もっと早く、この人に出会えていればと思う。胸が苦しくて、喉が熱くなった。
「ん」
ふにっと唇に柔らかいものが押し付けられる。強引に舌が入ってくることもなく、ただ感触を楽しむかのように押し付け合う。
「触るぞ」
「っん」
鎖骨に触れた大きな手がどんどん下っていく。寝衣の帯が解け、布がはだけた。下着をつけていない私の体を隠すものはなくなる。
これまで数年間、何度も蘇芳様にこの姿を見せてきた。だから羞恥心なんてものは、消え去っていると思っていた。
私の裸を眺め、ごくりと喉を鳴らす竜胆。ふたつの目が私に釘付けになっていることが嬉しくて、同時に恥ずかしかった。
「松葉」
「あっ、っぁ」
帯を解いた手に腰の中心を触られる。さわさわと撫でる手は次第に全体にまとわりついた。
「あ、んっ」
「どうだ、松葉……気持ち悪くはないか?」
「あぁっ、気持ちいい、です、っ」
「っ、そうか、良かった」
熱い手に握られ、優しく弄られる。強引な行為しか知らない私は、初めての感覚に息を乱した。
「あ、あっ、はぁっ」
「松葉……あぁ、気持ち良さそうだ」
愛しげな目が私を見る。はしたない顔を竜胆に見られているのかと思うと、ゾクゾクとしたものが背中を這った。
竜胆の中では凛とした姿でいたいのに、もっと暴かれたいとも思う。矛盾した気持ちを抱えたまま、吐息を吐き出した。
「ん、んっ、りんどう、さまっ」
「あぁ、儂の手だ。我慢なぞせず、身を委ねてくれ」
「あ、あぁっ、しかし、わたしばかりっ」
「儂がおぬしを甘やかしたいのだ」
「んんっ、あついっ、りんどうさまの、てっ」
ひとりで果ててしまっても良いのだろうか。答えが出ないうちに限界に手がかかる。優しく満たす手に促され、私は呆気なく熱を放った。
「あ、あぁっ、んんっ」
「松葉……なんと愛おしい」
はぁはぁと乱れた息を整える私に、竜胆は唇を降らせる。まるであやすように額、頬、こめかみ、瞼に口付けた。
「……竜胆さま、こんどは私があなたを満たしても良いでしょうか……?」
「儂を? 儂はもうすでに満ちているのだが……」
息が整うと体を起こす。さっきとは反対に、今度は私が竜胆に跨った。
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