14.

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「……っ、怖いんだ」  はい、と先生の手のひらが俺の背中を優しく撫でる。 「ずっと……ずっと、怖かった。誰かを好きになるのが。俺の中にはあのひとを好きな俺がいて、誰を好きになっても、あのひとの代わりにしてるんじゃないかって……」  先生は黙って俺の髪を手ぐしで梳いていく。 「先生のことだって、最初歯が綺麗なとこが似てるなって、なんでもあのひとが基準になっちゃって、そんな自分がイヤで」  もう涙でぐしょぐしょの俺の顔を先生の指が撫でていく。あったかい。 「――本気にならないって、決めてたのに」  もうこんなにも好きになってる。 「……無理に忘れる必要はないと思いますよ」  穏やかな先生の声が鼓膜に届く。 「その人を好きな永山さんがいたから、今のあなたがいるわけですから」 「先生……」  琥珀色の瞳が俺を射抜く。 「もう俺、言っていいんですよね?」  瞳の中に俺が映る。 「永山さん……好きです。その、あなたの中にいるもうひとりのあなたごと。―― 愛してます」  自分の気持ちに素直に。正面から向き合って。 「俺も……先生のこと、好き」  言葉にすると、気持ちが溢れ出す。  俺は、司先生のこと好き。こんなにも好き。 「永山さん……」  あ。ずっと見たかった、先生の極上の微笑み。すごく綺麗で……すごく扇情的。  ぼんやり見惚れていると、ゆっくりとその顔が近づいてくる。唇が重なる刹那、はっと動きが止まって先生が「いいですか?」って尋ねてきた。 「もう、訊かなくていいよ」  くすりと笑って大好きなひとの頬を両手で包む。 「先生、俺……先生と、ちゃんとエッチしたい」  ちゃんと向き合いたい。自分にも、先生にも。 「……はい」  触れ合う唇に、ぞくんと痺れるような恍惚感が全身を覆った。
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