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私は、カフェオレを一口飲むとホッと息を吐いた。
(あー、幸せ…。今日もカフェオレが美味しい)
私は、とにかくカフェオレが大好きで、飲み物と言ったらカフェオレ、一択だ。それくらい本当に大好きで、私にとってカフェオレを飲んでいる時間が1日で一番幸せな時間だ。
そんな至福の時間だからこそ、私は絶対にそれを邪魔されたくない。それなのに…。
私は、今、目の前の男にすごく怒られている。
「だから、お前は駄目なんだよ。」
私は、チラリとカップから視線を上げ、男を見てはため息をつく。
(はぁ…、何であんたに私は怒られなきゃいけないんだよ)
私の大切な時間を邪魔してくる目の前の男に対して、だんだんと怒りがこみ上げてきた。ちなみに目の前で怒っているのは、3ヶ月前に私に告白してきた男だ。そう、告白してきたのはこいつの方だ。
「そういう優柔不断なところが駄目だって言ってるんだ」
(だから、何でそこまであんたに言われなきゃいけないんだよ)
こんなに心の中では悪態をついているが、残念ながらこいつが言うように、私には、優柔不断なところと言うか決断力にかける部分がある。それは、確かに理解している。
物事に、悩んだ時、私は、真剣に時間をかけて考える。決して決められない訳ではない。ただ、時間がかかるのだ。
こいつと今、お茶してるのだって、その決断力のなさのせいだ。
あまり親しくもなかったこいつに告白された時も、私は、断る言葉を必死に考えていた。どうすれば、傷つけずかつハッキリと断れるだろうと。
しかし、あまりにも答えを出さない私にこいつは、私が答えを迷っていると判断してきた。そして、友達からでいいからと曖昧な答えを勝手に決めてきたのだ。それにもかかわらずこいつはすぐに彼氏ずらしてきた。
「だいたいなんでいつもカフェオレなんだよ」
「カフェオレは毎回悩まないですぐ選んでるけど」
「違うだろ。コーヒーなんだかミルクなんだかハッキリしない飲み物選ぶなんて優柔不断の塊だろ。コーヒーかミルクかハッキリと選べないから毎回カフェオレなんだろ」
(は!?何でカフェオレ頼んだだけでそこまで言われなきゃいけないの。だいたい、「今日はコーヒーにしようかな?ミルクにしようかな?すごい、悩む。そうだ間をとってカフェオレにしよう!」なんて、どこの世界にそんな脳内会議するやつがいるんだよ)
「珈琲店にきてるんだから、混ぜ物じゃなくてコーヒー飲めよ」
(お前が飲んでるのは、ブレンドだけどな。しっかり混ざってますけどね。そこまで言うなら、ミルクも砂糖も入れるなよ)
私は、やつの手元をじっと見た。私がそっと睨む目に気がつかないのか、やつは迷い無く、
(いれたー!しかも、ミルクも砂糖もたっぷりと。むしろカフェオレかと思うくらいに)
「ちゃんと聞いてるのか?そうやっていつもお前が悩んでばかりいるから、毎回俺が代わりに決めてやってきただろ。だけど、もういい加減自分で考えろよ」
(はあ!分かったよ。確かに私は、今回時間をかけ過ぎた。それは認めるよ。でも、悩んだかいあって今やっとピッタリな言葉がみつかったよ)
私は、すっと立ち上がり男に言った。
「告白の返事をします。あなたの事、大嫌いなのでお付き合い出来ません。そして、もうあなたと会うことは絶対にありません。さようなら」
「え?まって、俺たちって付き合って…」
私は、驚いて固まる男を残し、カフェオレをテイクアウトすると、さっぱりした気持ちで店を出た。
店を出て飲んだ一口目のカフェオレの美味しさに私は驚き、そして幸せに浸っていた。
「やっぱり、カフェオレって美味しい」
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