アン・ブラウン

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アン・ブラウン

アン・ブラウン、18才。 名門ブラウン家の娘として生まれ、何不自由なく育てられながらも慎ましやかな淑女に成長した。 豪奢なウエディングドレスがよく似合う輝くような美貌。 すべての美徳を手にした彼女は、これから世界で一番幸せな花嫁になる。 相手はヘンリー・A・バロウズ卿。 有り余る程の財力と端整な容姿を兼ね備えた2つ年上の貴公子。 この日、若く美しいふたりは神の御前で永遠の愛を誓う……はずだった。 青空の下、絹を裂くような悲鳴が響き渡る。 「アン!」 意識を失いぐらりと傾いた彼女の身体を抱き止めた父親も、目の前の光景に言葉を失う。 そこにあったのは婚礼衣装に身を包んだ新郎の変わり果てた姿。 その傍らに倒れているのはこと切れた黒いドレスの女。 顔中にどす黒く変色した血がこびりついているにも関わらず、彼女は何故か幸せそうに微笑んでいた。
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