壱 1

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 小学5年生の夏休みに入る2日前、父さんと母さんは離婚をした。理由は詳しくは知らないが、父さんが、 「壱、母さんを助けろよ、父さんが家を出るけどお前たち3人は、今まで通りだ。お金も全て心配ないから大丈夫だ。壱、頼んだよ」 「俺は、成を助ける」 「…えっ、そうか、…、うぅん、困った時は絶対に父さんに連絡しろよ、壱の事は父さんが助けるよ」 「うん」  あの時の父さんの顔を今でも覚えている。我が息子を憐れんでいるのか呆れているのか、その父さんとは半年に一度くらい会っている。  離婚って言われ体の半分が消えたような不安になった。  1学期最後の帰り道、俺は思い切って成に告白した。  不安が消えたわけではなかったが、成の返事を聞いて長年の思いが叶ったと嬉しかった。
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