成 10(壱と東京のアパートで会う)

1/11
前へ
/220ページ
次へ

成 10(壱と東京のアパートで会う)

 2か月ぶりの東京は、晴天で清々しい5月の気候だった。  土曜日のせいか人通りが少ない歩道を歩き、途中コンビニに寄った。  昼時で店内は混んでいた。どこから湧いて来た人達だろうと、どうでも良い事を思った。  食料と飲み物を買ってアパートに戻った。    部屋の中はなんとなく埃ぽい、壱はこのアパートに暫く帰って来ていないのだろう。  まだ壱が帰って来ないので、窓を全開にして掃除を始めた。  夕方に壱がきた。 「…、久しぶり」  僕は、一言だけ久しぶりと言う言葉がやっと出た。  あまりに酷い壱に、絶句してしまった。    身なりを整えない壱を初めて見た。  髪は帽子で誤魔化していたが、無精髭、パジャマのようなスエットジャージ。 「やっとシャワーを浴びてきた。ずっと洗っていなかった」 と、言って両手で僕に抱きついてきた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加