すべて私のもの

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 私には婚約者がいる。  彼は自営業をしていて、ちょっとイケメンだ。  あるとき私はもっとステキな男性に出会った。  優しくてイケメンで相性も抜群でエスコートもスマート。  比べるのもなんだけど、婚約者の方が頼りなく感じてしまう。 「あの人、既婚者だからやめなよ」  と、友人は言った。  余計なお世話だ。  あの人こそ私の運命の人に違いないのだから。  会うたびに「好き」の気持ちが高まっていく。  ところが彼ったらなかなか離婚しない。  ふたりの気持ちは固まってるはずなのに。  そうだ、私に婚約者がいるのがいけないんだわ。  私は婚約を破棄した。  その後、あの人の自宅に乗り込んだ。  そして言ってやった。 「私は彼と結婚するために婚約者と別れたの。だからあなたは離婚して!」  彼の妻は「えっ」と固まった。  こんな平凡な女より、私といる方が幸せになれるに決まってるじゃない。  私の啖呵に気圧されたのかどうか。  とにかく、彼らは離婚した。  めでたく私と彼は結ばれた。  姑も優しい。 「わたし、今度はうまくやろうと思ってるの」  と、ニコニコしている。 「俺も最初からお前と結婚すればよかった」  と、今や夫の彼も笑顔だ。 「そうでしょう」  私も願いがかなって満足だ。  義父母と同居するとは思わなかったけど。 「あなたのやり方でいいのよ。今度こそわたしは口出ししないわ」  何かにつけて義母は言う。  料理も掃除も洗濯も。  言い方がちょっとモヤッとするけど、文句つけてこないなら快適に過ごせる。  それから半年以上経ったある日、町なかで見覚えのある人物を見つけた。  夫の元妻と私の元婚約者だ。  一瞬、目が合ったように感じたけど、相手は気づかなかったらしい。  元妻は腹が出ていた。洋ナシ体型ざまぁ。  元婚約者の方は以前よりキラキラしてして見える。  イケメンに磨きがかかって、頼れるオーラが漂っている。  彼は元妻を気づかっていた。  え、なんなのこの展開。  もしかして、あれぽっちゃりしたんじゃなくて、おめでたの方? 私でさえまだなのに。  ますます許せない。  私への当てつけ?  あの女、許さない。  元とはいえ、私の婚約者を取るなんて。  これはなんとしても取り返さなきゃ!  私はスマホを取り出しメッセージ画面を操作した。  まずは元妻にメッセージを送ってやる。 『人のものを取るな』
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