揺れる思い(3)

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揺れる思い(3)

一区切り着けた俺は、今日はここで止めることにした。 留守にする口実が増えた。いいのか、悪いのかは、何とも言えないが。 何かしらの変化が必要かもしれない。色々試す価値もあるかもしれない。 工具を一日中使っていて、閃いた。 ネジひとつ、ボルトひとつ、ナットひとつも使い方次第だ。 が、頭を使う場所を間違ったようだ。 へとへとに疲れてしまった。 「戻ったぞ」 いつもと違う疲れのせいか、ふと、疑問に思った。今まで帰ってきたら何か言っていただろうか? 無言……だったな。これも変化か。半ばどうでもよくなってきた。 いつも通り、シャワーを浴びて、ウイスキーの瓶に手を伸ばす。 今日は多めに煽った。こうでもしないと、無理そうだった。 「……いるんだろ? 」 背中を向けたまま続けた。 「そろそろ決まったか? 君の望みを邪魔するつもりは一切ない」 独り言の様に続けた。 「聞こえないなら、仕方ないし、話せないなら仕方ない。だから応えなくていい。俺が余計な事をしたと思っているなら謝るよ。本当に悪かった」 「ただあのまま見過ごしたくはなかったんだ。何ていうか助けたつもりだったんだ……だけど、君に何もしてやれないのは、すまないと思っている」 俺は1本丸々空けるつもりだった。 「でも折角自由になったのに、指図はしたくない。好きな様に生きてほしいだけなんだよ。ああすればいい。こうしたらいい。そう言えればいいと俺も思うよ。だけど、君の事は君自信に決めて欲しいんだ。 それに、残念ながら、ふさわしい助言をできるほど利口じゃないからな……」 酔いを借りても無理か……タバコに火をつけた。これ以上言えばそれは、指図になる。 やはりダメか…… 明日からまた繰り返すのだ。 振り出しに戻っただけの事だ。 夜空を見上げた。 やるせなさにため息が出た。 「全部ただの独り言だ。騒がしくして、すまなかった」 思いの外を言葉にし疲れきった俺は、今日は何も言わず床に寝ようと思った。 もう、そこには誰も居なくて、また一人の生活が始まるだけだと勝手に決めつけていた。 自分なりに充分やったつもりでいた。 これからの展開を知るその時までは。
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