Gコード

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Gコード

 翌朝、俺はギターを手に取った。気が向いた時にしか触らないからか、大分埃にまみれている。本体を軽く拭き、バッテリーを確認したが、思った通り。うんともすんとも言わなかった。 バッテリーを充電し、動作の確認を終えた俺は、譜面とコードと指との睨み合いを始めた。 暫く格闘した後、大分指が思い出して来たのか、それなりに様になってきた。こうなると、今度はやめ時が掴めなくなる。 しまい込んでいたとはいえ、指は覚えているものだ。DmからA、C……。順に動く指先と、それに伴い響く音にふと違和感を覚えた。 Gコードがやけに高く聞こえる。 確かに譜面と位置は合っている。ここだけが、外れて聞こえる。いきなり間違えたように高くなり、それまでの全てが一瞬で台無しになるのだ。 どの曲を弾いても同じで何だか嫌になった。俺が悪いのか。もう壊れてしまってるのか。譜面が違っているのか。 少しがっかりした俺はタバコを一本吸い、同じ場所にしまう事に決めた。 気が向いたらそのうちまた弾くだろう。 何の楽器も中途半端で終わった。何かを極めたかった。何でもよかったんだ。戸惑わず躊躇することなく、堂々と奏でる姿にいつも憧れていた。 今はここで終わり。いつかそれなりに弾ける様になるだろう。Gコードが俺を戸惑わせた。ただそれだけの事さ。灰皿にタバコを押し付け、その日はもう、弾くことはなかった。また埃まみれになるだろう。そうなるのは最初から分かっていた。
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