hope

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もし、愛しい想いを感じたら すぐ言葉にして、相手に伝えるの。 明日にしよう。 そう思った時後悔しないために。 なぜなら彼は二度と帰らないかもしれないから。 嫌な事があった時。 出来るだけ、平静を装うの。 一時の怒りに身を任せない様に。 喧嘩は好きじゃない。泣くのも嫌いだもの。 だから、笑うの。ほんの少しね。 なぜなら、彼は謝るのが癖だから。 申し訳なさそうなその顔を見たら、嫌な思いなんて消えてくの。 気づいたら駆け寄って抱き締めてるのよ。 嬉しい事があった時。 私はありのままでいるの。 これだけは許されると思っている。 ありのままの姿で言葉で行動で表すの。 目を細めて見守る姿を、記憶に焼き付ける為。 喜びを共に分かち合いたいから。 不器用な彼は彼なりに共有しようとしてくれる。 その不器用さがたまらなく愛おしいのだから。 悲しい事があった時。 私はベッドに横になる。いつも彼が寝ている左側に。彼の枕に顔を埋め、匂いを感じるの。彼が生きていた匂いを。 涙が溢れる時もある。 明けることのない、苦しみに飲まれそうになる。 でも、信じるしかないの。 彼がもう一度此処へ戻ることを。 信じて待つしかないの。 私にはそれ位しか出来ないのだから。 彼が何処かへ向かう時。 精一杯微笑みを浮かべる、浮かべているつもり。 そして一言言うの。 「気をつけてね」 思いの丈をたった一言に込める。 これがどれ程辛いことか。喧嘩よりも辛い。泣くよりも辛い。悲しむより辛い。辛くて辛くて、当てはまる言葉がない。 「ありがとう。行ってくる」 そう言って彼は行ってしまう。 私の知らない所へ。 彼の帰りを待つしかない私に戻るの。 何も出来ない自分になるの。 そして、ベッドへ向かい、神に祈る。 彼が無事でありますように。 どんな姿だっていい。 何だっていい。 帰ってきてさえくれたら。 お願い一人にしないで。 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、私は…… それでも彼の前では明るい私でいなければならないの。 なぜなら彼はとても脆くて弱くて寂しい人だから。悲しい人だから。 愛する人だから。
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