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「俺はあの頃からお前のことが好きだった。この3年間、遥香のことを思い出さなかった日はない。だから形は政略結婚だとしても、俺にとっては恋愛結婚だから」
「ずっとそんな風に思っててくれたの?」
「俺、お前に告ったけど、遥香からの返事は貰えずじまいだったよな。母や叔母のこともあって、そんな話をするような状況じゃなかったからな仕方ないが」
昌代の出奔と典子の死。突然告げられた多くの真実に昴が戸惑っているうちに、一度は切れてしまった縁だ。
「目の前のトラブルで手いっぱいで、余裕がなかったものね」
「あの時の返事、聞かせて貰ってもいいか?」
「昴さんと初めて会った時から惹かれたし、一緒にいて楽しかった。だけど、最初の頃は実の兄妹だと思ってたから、この気持ちは一生内緒にしておかなくちゃって思ってた」
「遥香側の事情も複雑だったんだな」
「ママの日記を読んで昴さんとは兄妹じゃないと分かったけど、真相を知る為に身の上を偽ってたから、本当のことを言えなくてとても苦しかった。鎌原部長が亡くなった後、全部説明して謝りたかったけど、そんな機会もなかったし、何より一緒に居るのが辛くて苦しくて」
目的は果たしたものの、その影響の大きさと、罪のない昴を結果的に傷つけたことに自責の念を感じていたのだ。
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