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「俺もそうだ。俺の家族が遥香と麗奈さんに何をしたのか考えたら、遥香の前でどんな顔をしていいか分からなかったんだ」
日本庭園を抜け、薔薇が咲き乱れる散歩道へと差し掛かった。
「だけどね、月季館を出る前、ジェイクが言ってたの。『親は親。子は子だから。親のしでかしたことは置いておいて、月季館で育んだ友情は忘れないでいたいね』って」
「そういう風に切り替えられれば楽だよな」
「親は親。子は子。別々の人間なんだもの。もう3年以上も経ったんだから、周りの人が何をしたかは忘れ、全てをリセットして1からやり直してもいい時期なんじゃないかなって、やっと思えるようになったの」
「いいのか? それでも」
「そうしたいと思ったから、今日ここに来たんだよ。私の苗字も変わったことだし、三上遥香として話すのは今日が初めて。丁度いいでしょ?」
過去のしがらみにいつまでも囚われているのは遥香らしくない。
もう、前に進んでもいい時期なのだと遥香は思いたかった。
いや、そうするべきなのだ。きっと麗奈も秀雄もそう望んでくれているに違いない。
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