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「け、け……警察に連絡しなくちゃ」
奈緒の震える声を聴いて
「助けを呼びましょう」
麗奈は焦りのあまりブルブルする手を叱咤激励しながら、バッグの中の携帯電話を手探りで探した。
あった! 暗闇の中で、携帯の画面の灯りが心強く思えたのは束の間のこと。
「圏外なんて!」
その表示に麗奈は絶望を覚えた。
「そんな、どうしよう」
自分の携帯も圏外なのを見た奈緒は泣きそうな声を出している。
助けを呼ぼうとしたのに圏外とは、他に手立てはない。もう万事休すなのだろうかと麗奈の心に底なし沼のような絶望が広がった。
捕らえられた野生動物のようにおびえ切った目で、どうにかここから脱出しようと周りを見回した二人の耳に、シューッという音が聞こえたきた。
!!
今度は何?
どこからか何かの気体が噴き出してきているようだ。
これはきっと吸ったら危険なものに違いない。本能がそう告げているが、数か所から噴き出ているらしい気体を防ぐ手立てなどあるわけがない。
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