遠い夏の匂い

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 屋台でそれぞれ好きなものを買い、高台の方へ向かって歩く。花火の会場は河川敷だが、地元民だけが知る穴場のスポットがあるのだ。  高台に到着し、椅子がわりの石段に腰をかけると、ほっとひと息ついた。 「もうそろそろ始まるね」 「そうだね」 「さっき買った焼きそば食べる?」 「いいよ」 「お茶も飲むよね」 「うん」  私が話しかけて、リョウが返事をする。淡々とした会話。私が喋らなければ、ずっと無言なんだろうなと思えた。  控えめな乾杯をしてお酒を飲んでいるうちに、花火が始まり、辺りをカラフルな光が照らした。 「綺麗……」 「そうだね」 「花火ってすごいよね。いろんな形して」 「うん」 「来年も見れるかな」 「……」  その後は、お互いに言葉はなかった。
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