遠い夏の匂い

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『ごめん、好きな人ができた。別れてほしい』  まだアスファルトの熱が冷めない、日が暮れた帰り道。  突然届いたメールに、胸が抉られそうなほど傷む。  けれど同時に、どこかで予想していた言葉でもあり、深くため息をついた。 「せめて直接言え、バカ……」  高校一年生の夏。隣のクラスのリョウと付き合い始めたのは、ちょうど二カ月前。  きっかけは私の一目惚れで、猛アタックの末に付き合うことになった。  と言っても、リョウはその時、長年片思いしていた幼馴染相手に絶賛失恋傷心中で、「お試しでもいいから」と半ば強引に付き合ってもらったのだ。  お試しのわりにはリョウも私のことをちゃんと『彼女』として見てくれていたと思う。毎日のように一緒に登下校をして、週末はデートをして……キスだってたくさんした。それから、初めてのセックスも。  傍から見ても、私たちは順調そのものだったのだ。毎日が幸せで、胸がいっぱいになるほど。  そんなリョウに異変があったのは、二週間前。毎日「大好き」「可愛い」だなんて甘い言葉を吐いていた彼が、ぱたりとそれをやめた。  私はすぐに気付いた。友人に頼んで探ってみれば、リョウが失恋した幼馴染が彼氏と別れそうになり、リョウに相談しているとのこと。  まだ別れてもいなければ、リョウと付き合ったわけでもないのに、バカみたい。  心底幼馴染にイラついたけれど、きっと私なんかが叶う相手じゃないと思ってやめた。  もともと「お試しでいい」と言ったのは私なのだ。引き止めるのもかっこ悪く、別れたくない思いとは裏腹な言葉を打ち込んだ。 『わかった。でも、最後にお願いがあるんだ』
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