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「スイカか……」 同じサークルの友達が持ってきてくれたスイカを狭いキッチンで切りながら、わたしは呟いた。丸々3玉も持ってきてくれたスイカを見て、どれだけ力持ちなのか、とか女子大生の一人暮らしでどうやって3玉も食べればいいのか、とかそんなことよりもまず真っ先に、子どものときのあの思い出が頭をよぎってしまう。 「スイカ嫌いだったー?」 せっかく持ってきてくれたスイカを前に暗い声をだしてしまったのを聞いて、友達が呑気な調子で尋ねてくる。 「嫌いではないけど、なんとなくずっと避けてたのよ。ちょっと怖い思いをしたことがあってね」 「怖い思いって、何? 夏の夜にちょうどいい話?」 身を乗り出して話を聞こうとしてくる友達の姿に苦笑する。 「別に、そんなホラーな話じゃないわ。ちょっと驚いた話って言うか、なんていうか……」 一瞬悩んだ。いきなりこんな非現実的な話をしたらドン引きされるのではないだろうかと一瞬躊躇した。 「ねえ、スイカ吸いって知ってる?」 「スイカ水? ジュース? なんか知らないけど美味しそー」 そりゃ知らないか、と思い苦笑する。実際に見たはずの自分でさえも夢か現かわからない話なんだし、見た事なければまったく訳がわからないだろう。 「ううん、違うわ。スイカの中身を吸ってしまう動物なのよ」
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