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「神崎さーん」
公園の入り口から歩いてくる、細身の長身の若い男性。
旦那に向かって真っ直ぐ歩いて行く。
私はドキッとした。
かなりのイケメンで…ゆうくんの面影がある?…まさか、ね。
何の確証もないけど、私の鼓動が高くなる。
「あぁ、島村さん。島村さんもこちらの社宅ですか?」
旦那の新しい部署での同僚だろうか。面識がある程度の仲のようだけど…。
私は動悸を抑えつつ、旦那の元にゆっくり歩み寄った。
「えぇ、生まれも育ちもこの社宅!この社宅の外を知らない籠の鳥ですよ。…まぁ珍しい事でもないですがね」と島村という男性がハハッと笑う。
「へぇ、ウチの嫁も幼い頃ここに住んでいたらしいですよ」
私は呼吸を整え、笑顔で挨拶する。
「初めまして、神崎の家内の詩織です。主人がお世話になります」
あえて名前を言ってみたが、島村は表情ひとつ変えず「こちらこそ、お世話になります」と会釈した。
反応がない、違うのかな…。
島村は綺咲が手にするドングリに気がついた。
「内緒なんですけど、実はあのドングリの木、植えたの僕なんですよ」
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