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そのあと、ベンチに座ったまま花火が打ち上げられるのを全部見届けて、ぼくとミナミさんは別れることになった。
空いたコーラの缶とたこ焼きのパックを近くのごみ箱に捨てて、ぼくらは名残惜しい喧騒の中、夜空を見上げていた。
「由岐、ちゃんと帰るんだよ?」
「帰りますよ」
もう「世界」は怖くない。だってぼくは、ひとりぼっちじゃない。ミナミさんっていう強力な仲間がいるから。
「それより、ミナミさん、どうやって未来に帰るんですか?」
「……どうにかなるでしょ。意地でも帰んないと。恋人も待ってることだし」
「あー、やっぱり初めに言ってた久しぶりに会う人って、恋人だったんだ」
何の気なしにそう言って「ん?」と気がつく。
「ちょっと待って、これってぼくが未来のミナミさんに逢いに行っても、ミナミさんは一緒に最期を迎えたい人がいるってオチ?」
「あーもう! 細かいことは気にしないの!」
「約束したんだから、守ってくださいね?」
そう言ってけらけらと笑ったぼくに、ふと和らぐまなざし。
「由岐」
「ミナミさん?」
「……未来で、まってるから」
ミナミさんは、そう言って大きく笑って、そのままぼくの頬にそっと触れた。
その体温は、まるで、夏の風みたいだな、と思った。
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