(五)桜咲く

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(五)桜咲く

 地球に誕生した桜の木。しかしそのことに人間たちは、最初の春が訪れるまで気付かなかった。ただ平凡な木だとばかり思っていたのである。  サクラ星人たちが化身した桜の木が、この地球上で一番最初の春を迎えた時。桜の木たちは、それは見事な桜の花を咲かせた。その姿を見た人間たちは、大いに驚いた。そして初めて目にする桜の花の、この世のものとは思えない美しさに、魅了され見惚れずにはいられなかった。  しかしこの地球上では、折角咲いた桜の花も一瞬で散ってしまう。桜は春にだけ花を咲かせ、すぐに散った。その儚さがまた人間たちの心を揺さぶり、哀愁、物の哀れさを誘ってやまなかったのである。  こうしてサクラ星人たちの桜の木は春の風物詩として、人間たちの心を大いに慰めた。人間たちの暮らしにとって欠かせない大切な存在、パートナーとなっていったのである。また元々長命であるサクラ星人たちの寿命を反映し、桜の木も何百年も生きる長寿の木となった。
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