(七)サクラ

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(七)サクラ

 時は一九六八年(昭和四十三年)、第二次世界大戦の終戦から二十三年目の年である。場所は日本国神奈川県横浜市戸塚。JR(当時、国鉄)の戸塚駅前を、柏尾川という川が流れていた。  柏尾川の川沿いに長い桜並木があった。物語の主人公は、この桜並木の中の一本の桜の木である。  桜の木が桜源郷のサクラ星人が化身したものであることは、既に述べた。よって桜並木のような複数の桜の木が並ぶ場所では、サクラ星人たちが仲間と会話をしている。ただし会話とは言っても、人間には聴こえないテレパシーを使って。  主人公の桜の木は、柏尾川の桜並木の仲間たちから『サクラ』と呼ばれていた。サクラは、既に樹齢二百五十三年の長寿の桜の木である。しかし後五十年足らずの樹齢三百年を迎える頃には、寿命が尽きる運命にあった。そしてそのことを、サクラ自身悟っていた。
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