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「名前知らないから、そう呼んだだけ。
売れないホストって、やめてもいーよって。」
「ありがとう。
俺は、カズヤ。」
「どんな字?」
「え?字?
ああ、平和の和に、木村拓哉の哉だよ。」
「言い方めでたい上に、キムタクとか古っ。」
そう言いながら、スマホを出して、検索する。
「なに?友達に連絡?」
「ちがーう。どこの店かなって。
うわっ。和哉ってめっちゃいるじゃん。めんど。店名は?」
「調べても出てこないよ。
和哉は本名だから。源氏名はまだ秘密。」
「つまんなー。」
そう言って、3本目のチューハイを飲み干した時、部屋が涼しかったからか、眠気が襲ってきた。
「ねむ…。」
「そこで寝たら風邪ひくって…ベ…で…。」
薄れゆく意識の中で、売れないホストがなんか言ってた気がする。
翌日、目を覚ましたら、タオルケットがかけられてて、部屋は薄暗かった。
カーテンを開けようとして、日差しが眩しくて、すぐ閉じた。
今、何時?
「え?5時?夕方?」
やば。
昨日、薬残ってたから、寝過ぎた。
そーいえば、売れないホスト、じゃない、和哉は?
重い体を起こして、周りを見回したら、メモがあった。
"ちょっと出かけてくるね。
もし出かけるなら、鍵は新聞受けに入れといて。
できれば、起きたらLINEして。"
LINEのIDと一緒にそう書いてあった。
「あ!二万!」
テーブルの上に、あったー!
「マジ偽善者だな。笑」
LINEとかするわけないじゃん。
メリットなさそーだし。
「んー、でも宿に困ったときはさー、んー。」
なんて自問自答してたら、玄関の開く音がした。
「起きてた!よかった。」
「ODで死ぬでも思った?笑」
「そうじゃないけど、なかなか起きないから。」
「お腹減ったでしょ。Uberでなんか頼む?」
「それよりお水飲みたい。」
「そうだよね、ちょっと待って。」
和哉はキッチンに行って、氷の入った水のコップを持ってきてくれた。
「冷たい。」
「文句?笑」
「そー。って、嘘やん。笑。ありがと。
でも、もー行かなきゃ。」
「行くってどこに?」
「歌舞伎に戻る。今夜の宿探さなきゃ。」
「そのまま、うちにいればいいじゃん。」
「やっぱやりたい?
あ、腕が動かないから、できないのか。
なら、上になろっか?口でする?」
「ちょちょちょ、違うし。
昨日言わなかったっけ?
俺は3日つまり、明日まで休み。
あと、お願いがあるって。」
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