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翌日、起きると、和哉はまたいなかった。
時刻は昼前。
結構寝たからか、体が軽かった。
「んー!!!」
盛大に伸びをしてるときに、和哉が帰ってきた。
「おはよ。よかった、早めに起きてくれて。」
「なんで?花火は夜でしょ。」
「でも、これやるには、ちょっとここら辺じゃできないから。」
和哉は、打ち上げ花火も入ったセットを持っていた。買いに行ってたのか。
「買い物行って、ちょっと広めの公園まで行こう。」
「買い物?」
「女の子だから、服とか下着とか欲しいでしょ。」
「まぁ…。でも荷物増えるの困る。
コインロッカーに預けてるから。」
「ここに置いとけば?」
「えー。だる。」
「ま、考えながら出かけよ。」
結局、和哉に上下の服と下着買ってもらって、公園に着く頃には6時になってた。
「まだ、明るいよ?」
「いいのいいの、やることに意味あるから!」
妙にウキウキした声で、和哉は花火セットを一つずつ袋から出していく。
「あ、これなら、できる!」
「ネズミ玉?」
「うん。知らない?もこもこってヘビみたいに煙出るやつ。」
「知らないし、表現下手すぎて無理。」
「やればわかるよ。」
そう言って和哉が火をつけた花火は、うねうねと煙が膨らみ出した。
「ね!ヘビみたいじゃん?」
「いや、どっちかってゆーと、うんこ?」
「女の子がそういうこと言わない!」
「女の子扱いすごくない?ホストだから?
別にホストだって、アイドルだって、キャバ嬢だって、うんこするし。」
「うーん、確かに。」
和哉は、納得したよーだ。
「次、どれにしよっかなー?」
さっきよりもっとウキウキした声で、花火を選んでる和哉を、私は眺めてた。
「なにやってんだろ。」ため息が出る。
「え?なにー?」
シューっという音の後に、パンッて弾ける音がしてびくってなった。
「あ、打ち上げか。」
独り言を言いながら空を見上げたら、仄暗くなってた。
「いい感じ!どんどん行くぞー!」
結局、打ち上げ花火を全部和哉がやって、私はただそれを見てた。
「はい、これ持って。」
空が暗くなった頃、手持ち花火を渡された。
パチパチと音を立てて花火が燃える。
でも、それは一瞬。
すぐに火が消える。
「大丈夫!まだまだあるから!」
私の心を見透かしたように、次の花火を渡されて、また火をつけた。
いくつかの花火を、やり終えたとき、和哉がぼそっと言った。
「これで最後か。」
なんだっけ、それ。
あ、線香花火ってやつ?
ヒラヒラと紙の付いている方に火を付けようとした私を見て、和哉は、慌てて言った。
「反対!反対!細い方!」
「え?あ、こっち?」
和哉が火をつけてくれて、線香花火は燃え出した。
「…綺麗。」
頭で考える前に言葉が出た。
和哉は、にこにこしてるだけで、なにも言わなかった。
ジュッ。
火玉が落ちる。
3つ目の線香花火を眺めてるとき、言葉を絞り出した。
「…なんでなんにも聞かないの?」
「んー?」
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