花火

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普段は一緒にベットに入ることはなかった。 でも、その日は一緒に入った。 「するの?」 「しない。でもキスだけしたい。」 「うん…。」 …っ。 唇が触れるだけの、優しいキス。 もっとして欲しい。 もっと触れて欲しい。 抱いて欲しい。 でも言えなかった…。 だって私の体は汚れてるから。 12の時から…。 和哉に抱きしめられて、横になってる時、また涙が流れた。 その度に、和哉は私の背中をぽんぽんってしてくれる。 「…私の話、信じてくれる?」 「舞の言うことならなんでも。」 「私、12の時、父親に犯されたの。 母親に行っても、信じてもらえなくて。 母親が夜の仕事だったから、夜は父親と2人で。 毎晩夜が来るのが怖かった。地獄だった。 夢ならいいのに。何度もそう願った。 いっそ、父親が義父とかで本当の父親じゃなかったらもっと救われてた。」 「舞…。」 「中学に入って、友達が彼氏できた、手を繋いだって話を聞いた時、吐いたの。 もう限界だった。 帰ってすぐ荷物まとめて、歌舞伎に来た。 そこからは、ずっとトー横キッズ? 一回だけ補導されて、家に連れ戻された時、なんて言われたと思う? 父親が、ほかの男に抱かれた売女が!!って。」 「…。」 「正直、最初はキモいおじさんたちに触られたり抱かれたりすると、怖かったし、嫌だった。 でも父親のことを考えると、それも消えた。 そこからは、流れるように落ちてった。 薬をODして、ラリってる時が楽で、いっそこのまま死ねたらなーって思った。 でも、リスカ後ないでしょ? リスカじゃよっぽどじゃないと死ねないこと知ってるから。 だったら、高く売れる体の方がいいって考えだった。 でも、でも!」 「舞?俺は、それでも舞が好きだよ?」 「…っ。 和哉に会ってから、他の男に抱かれるの嫌になってた。 18になったから、風俗しかないって考えると闇だった。 これが、和哉のこと好きって気持ちなんだよね、きっと。」 ぎゅっと和哉の腕に力が入った。 「俺は待つよ。 舞が俺のこと、好きだって自覚できるまで、抱かない。」 「違う! 本当は抱いて欲しい。でも私、汚い。」 「汚いなんて言うな。 でも、もう他の男に抱かれるのは、なしな。 今日から生まれ変わろ。 俺もホストで他の女抱いてたから、汚れてる。 だから、一緒に明日、花火打ち上げて、空に投げよう。」 「和哉…。」 「それで、明日、花火が終わって、もし舞が俺のこと好きって思えたら、俺は舞を抱くよ。」 「…うん…うん…。」 「誕生日おめでとう。誕生日ありがとう。」 「なにそれ?笑」 「舞が、心の中で、誕生日おめでとうって言ってくれたから。」 「決めつけー!笑」 とめどなく涙を流しながら、笑いあった。 和哉も泣いて、笑ってた。
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