花火

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何分くらい走ってたんだろ。 ぼーっと窓の外眺めてたら、 「こちらで?」 って運転手の声がした。 「あ、はい。Suicaで。」 「コンビニ寄ってこ。 飲み物とか、女の子だから歯ブラシとか欲しいでしょ。」 そう言うと、売れないホストはコンビニの中に入って行って、怪我してない方の手でカゴを持った。 「それじゃ買い物できないじゃん。」 ちょっと優しさにイラッとして、カゴを奪い、歯ブラシと洗顔セット、9%の酒を何本かと水をカゴに入れた。 売れないホストは、コーヒーだけカゴに入れて、レジに進んだ。 …ふーん、酒入れたことは何も言わないんだ。 会計を済ませて外に出ると、売れないホストは後ろをチラチラと振り返りながら、歩いていく。 「なんか心配事?」 なんとなく聞いてみたら、 「ちゃんと着いてくるかなって。」 「一万くれるんでしょ?行くよ。」 新しいとは絶対言えないマンションのエレベーターに乗った。 男は七階を押すと、バックから鍵を出して、ドアを開けてくれた。 「散らかっててごめん。 あ、あとタバコ臭いかも。」 「別にへーき。でもコンビニでタバコ買わなかったじゃん、って、広っ!」 ワンルームに思ってた部屋は、何部屋かあって、まぁ綺麗じゃないけど、汚くもなかった。 ただ、物が少ないなって印象。 「あ、ここ、店の寮なんだよね。 もうみんな出てったから、今は1人だけど。 俺はタバコ吸わないけど、前のやつらが吸ってたから臭いするでしょ。」 「あ!!ヨギボー!!」 あんまり聞こえないふりして、有名なクッションにダイブする。 「きもちー。ちょーだい!」 「あげないよ!ってか、話聞いてる?」 「んー、あんま?やるのに事情とか聞いてもめんどいだけだし。」 「だから、やらないって。」 「じゃー、一万は?」 「そんなにケチに見える? はい。」 売れないホストは、ケガしてる腕で不器用そうにブランド物の財布を出して、二万を私の手に乗せた。 「え?二万くれんの?」 「うん。でも、後でお願い聞いてもらうから。」 なんか、背中を冷たい汗が流れた。 ちょっと早まったかな…。
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