あの日の花火-一分間の魔法-

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拝啓 桜の花も盛りを過ぎ、これから夏に向かっていく草花ののびやかさに目を見張る日々です。すっかりご無沙汰しております。いかがお過ごしでしょうか? 先週、母が他界いたしました。もろもろの雑事もひと段落し、やっとこうして筆をとることができました。  母が天に召されたのは、ぽかぽかと思わずまどろんでしまいそうな、穏やかな日和でした。先生のお薬のおかげで息苦しさも感じることはなく、娘が拾ってきた桜の枝を枕元にさして、子供たちにも孫たちにも囲まれ本当に眠るような静かな最期でした。 花の下にて春死なん、母がずっと口にしていた願いもかなえられました。これもあなたの魔法でしょうか?
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