あの日の花火-一分間の魔法-

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母は幸せな人だったと、今は、そう思います。天寿を全うしたとは言えないのかもしれませんが、私には母が病気になったことも含めて不幸せだったとは思えないのです。 もちろん、これまで、たくさん悩み、苦しみ、恨みました。父を癌で失った悲しみからやっと抜け出して、家全体が少しずつ明るさを取り戻していた矢先に、聞いたこともない病名を告げられて、この先の人生には二度とみんなで笑いあえる日なんて来ないのだと思いつめていた時期もありました。それでも、皆様に支えていただいて家で過ごせた日々は、母にとっても私たち家族にとってもかけがえのない時間でした。足が遠のいていた子供たちも帰ってきて、孫の顔も見られるようになり、母は望んでいた家族で過ごす時間をこんな少し強引なやり方で手に入れたのかしらと思わずにはいられないのです。 自分たちのやり方が間違っていなかったと思いたい娘の色眼鏡かもしれませんが、今は心の底からそう思います。この境地に至るのがもう少し早ければというのが、一つの心残りでしょうか。
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