あの日の花火-一分間の魔法-

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あのとき、ただただ黙って話を聞いてもらえたことが本当にありがたかったのです。肩に添えてくださっていた手のぬくもり、今でも忘れません。そのあとにあの魔法のお話を聞いたときには、私の気持ちをほぐしてくださったのも魔法だったのかしらなんて思ったくらいです。 魔法使いであるという告白をうかがうのに、あれほどふさわしいタイミングはなかったのかもしれません。「一分間だけどんな願いもかなえてくれる魔法」というおとぎ話みたいなお話は、幼い女の子だったころに私を連れて行ってくれました。こうして考えると、やっぱりあなたの魔法の力はあなた自身と切り離して考えることなんてできませんね。  話がどんどんそれてごめんなさい。私は子供のころ、ずいぶんと魔法使いにあこがれていた時代がありました。お菓子を好きなだけ食べたいとか、空を飛びたいとか、お姫様みたいに変身したいとか、そんな子供らしい願望とは別に、魔法の力で世界中の人を笑顔にしたいと、本気で思いつめていた時期があったのです。 ですから、本物の魔法使いさんがこんなつらい時に私のもとへやってきて、本物の魔法で助けてくれる、と聞いてなんだか自分の幼いころの夢が報われたような気がしたのです。
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