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「お久しぶりです!」
笑顔で彼がそう言った。
それは思惑通りだったのだが、予定を変更して心の準備が出来ていなかった景子は吃驚して、動揺を隠すためにいつものように軽く会釈して立ち去ろうとした。
「あの……」
再び声を掛けられた。
立ち止まらないわけにはいかない。
「はい……?」
景子は平静を装って返したつもりだったが、隠せていたかはわからない。
「前にどこかで、お会いしましたっけ?」
そう言う彼からも、ぎこちなさが窺えた。
『ダレダレ詐欺』が成功を得た瞬間だった。全て筋書き通りに進んだことが何だか可笑しく思えてきた。そして悪戯心が芽生えた。
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