思い思われ嵌め嵌まり

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待ち合わせの十分前に約束のコンビニに到着するとすぐに、横断歩道を渡る隼人が見えた。目が合うと隼人は小走りになって、そのまま勢いよく景子に迫ってきた。 圧倒された景子は、後ずさりして壁に背をつけて隼人を見上げたまま、身動きがとれなくなった。 頭上には隼人の右手…… ――こ、これは……壁ドン!? ゆっくりと近付いてくる隼人の顔を見つめて固まっていると、隼人がにんまりして顔を離した。 「冗談っす! さすがにチューしたらヤバイ奴でしょ」 「やだっ! び、びっくりするじゃん!」 景子は呼吸を整えるのに必死だった。 「さっきの仕返し――」 「ああ……」 と景子は納得した。 「――もあるけど……これぐらいしとかないと、また急に会えなくなって俺のこと忘れられたら困るし」 「え?」 景子が聞き返す。 「俺、実は景子さんに会いたくて、毎日同じ時間にここ通ってたんです」 ――いや……それは私があなたに合わせてたわけで……? 「景子さんと初めてすれ違って会釈された時、俺一目惚れしたんです」 景子は言葉を失っていた。 「景子さんが人違いしてるだけだろうなと思ったけど、また会えたらいいなと思って、次の日もここに来たんです。そしたら会えて……」 ――じゃあもしかして、信号待ちでキョロキョロしてたのって、やっぱり私を探してたってこと!? 「今日来てくれて、俺、今すごい舞い上がってるけど、もし景子さんに全くその気がないなら……今日はこれで解散しましょう」 「え?」 ――何? やだ!! ちょっと待ってよ! 突然迫られた選択に、景子は困惑した。 広美に相談する時間などない。 これはもしや…… 思わせぶり詐欺か!?
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