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いつものラーメン屋で三人並んで座った。
「……うーん。俺、味噌」
「和は味噌か~。味噌も捨てがたいけど、俺はやっぱり醤油だな」
「夏希は?」
肩が触れる距離から、和先輩が俺を覗き込む。この人のこういうとこ……昔から変わらないな……
「……俺も味噌で」
「……夏希は、いつも俺の真似っこだな」
何がそんなに嬉しいのか、隣でニコニコ笑う和先輩は、とても年上には見えない。
葵先輩と俺に挟まれた華奢な肩。ふっくらとした頬は幼くて……男にしては可愛い。少しボリュームのある唇は、なぜだかいつも艶めいていて……
柔らかい身体と、細いのにしっかりついた筋肉、さっき抱き締めた時に初めて知ったその感触。
俺………やっぱり変だ
「……来週の試合、真冬(まふゆ)先輩見に来るって言ってたな」
和先輩から不意に出た話しに、我に返る。
「……兄貴が?」
「……ああ。この前連絡が来た」
「……和先輩、兄貴と連絡取り合ってるんですか?」
「えっ?うん。取り合ってるよ……なんで?駄目か?」
くりくりの目を見開いて、不思議そうに俺を見つめる先輩。
「……和と真冬先輩は、仲がいいもんな……」
和先輩の横から、少し拗ねたように葵先輩が呟く。
「……そ…そんな普通だろう」
和先輩の頬がピンク色に染まって、なぜだか俺は苛立ちを覚えた。
「はい!お待たせ」
おじさんの掛け声と共に、差し出される器を受けとると「うまそう!」と先輩達が声を合わせて食べ始める。
「はい。夏希」
俺がやっと手をつけたラーメンどんぶりに、和先輩が、自分のチャーシューを一枚のせた。
「えっなんで?」
「夏希、なんだか元気ないから……これでも食べて元気だせ」
「ああーズルい!なんで、夏希だけ?」
また隣で、葵先輩が騒ぎだす。
「……もう、葵は………はいどうぞ」
そう言って、和先輩はもう一枚しかないチャーシューを箸で半分にして、葵先輩のどんぶりにのせた。
ニカって音がしそうなぐらい笑った葵先輩が、満足そうにチャーシューを頬張る。
………俺もそっちが良かった
もらったチャーシューは、俺の方が大きいのに残念な気持ちになるのは………
今も隣で感じる、和先輩の香りのせい……?
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