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一晩考えたって、何か答えが出る訳じゃなくて、寝不足でだるい身体を引きずって学校に着いた。 一限目は嫌いな数学で、俺は窓際の席でぼんやりと外を見ながら、ただ時間が過ぎるのを待っていた。 部活に行けば、先輩に会える。気持ちを認めた自分がこれからどうなるのか、分からないけど…… いっそのこと香りに身を任せて、あの華奢な身体を自分の腕の中に閉じ込めてみようか…… そんな想像に心臓がぎゅっと掴まれた時、賑やかに外を歩く集団の声が聞こえてきた。 ………体育か? ボールを手にガヤガヤと騒ぎながら出てくる人達。 あっ… そこには、今まさに頭の中で、俺の腕の中にいた人。 周りに笑顔を振り撒きながら、グランドに駆け降りていく。葵先輩とじゃれあいながら、サッカーボールを蹴り合う。 あの二人、本当に一緒にいるんだよな…… 幼稚園の頃からの幼なじみで、高校まで一緒ってどんだけだよ。 「本当は俺、めちゃくちゃ人見知りだったんだ。でも、葵に会って葵が皆の中に連れ出してくれたから、今みたいに誰とでも話せるようになった。感謝してるんだ」 そんな言葉を和先輩から聞いたことがある。 端から見てても、特別に感じる二人の関係。 ………ちょっと待てよ……この二人って単なる幼なじみだよな………? 和先輩も葵先輩も、実はかなりモテる。試合の時なんか、相手の高校の女の子が黄色い声援を挙げて、相手チームが機嫌が悪くなるくらい。 なのに、二人とも彼女がいるって噂を聞いたことがない。 自分の気持ちを自覚した途端、周りの気持ちが無性に気になる。 …………いやいや……男同士だし でも………俺も男だ ぐるぐる回る頭の中。始まったサッカーの試合。ボールを追いかける和先輩から目が離せない。 サッカーも上手いんだな…… 俺の身体が、自然と窓の外に向いてしまう。 今が授業中だということも、すっかり忘れて集中して見ていると、コートの左サイドでパスされたボールを受けた先輩が、相手チームの人とぶつかって撥ね飛ばされた。慌てて駆け寄る葵先輩。 少し話しかけた後、和先輩の腕の下に頭を回して抱き起こした。膝下を擦りむいたのか、血が流れてる。 怪我した?大会目前だぞ。 葵先輩に凭れるように、歩き出す和先輩。大丈夫なのか? 「先輩!」 俺は気がつくと窓から大声で叫んでた。その声に気づいて上を向いた先輩。 「おーい。夏希」 ニコニコしながら手を振ってる。大丈夫そうだ、ほっと胸を撫で下ろす。 「………授業中なんだが…」 横から先生に声をかけられて、はっと我に返った。 「……すみません」 椅子に座ると同時に、教室が笑い声に包まれる。 こんな時、つくづく思う。何で同じ歳に生まれなかったんだろう…… 同じ歳だったら、あんな時一番に駆けつけられたのは、俺だったかも知れないのに…
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