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軽いパス回しをしながら、和先輩を見る。膝下に貼られたでかい絆創膏。 動きはいつもの同じだから、擦り傷だけだったみたいだ。 「ゲーム練するぞ!」 監督の言葉で、明後日の試合に備えたゲーム形式の練習が始まった。和先輩は相手チーム。 チラッと顔を盗み見ると、スイッチの入った真剣な眼差しが返ってきた。 いつもの可愛い顔は、何処へやら。序盤からハイペースで攻めてくる。葵先輩との息も相変わらず合ってて、なんとなくムカついた俺も、攻めに転じた。 お互い譲らず、競り合って終わったゲーム練。 呼吸を整えようと、体育館の壁に凭れて座り込むと、隣に和先輩が座った。 大きく息を吐きながら、足を伸ばして座る。お互い肩が触れ合う距離にいるから、またあの香りに包まれる。 「……夏希……なんか吹っ切れたみたいだな」 「………そうですか?」 「うん。動きに迷いがなかった」 ………全然吹っ切れてないよ。でも、あんな真剣な顔されたら、俺の恋心なんて気にしてる場合じゃないって…… 「……明後日、頑張ろうな。頼りにしてるから」 そう言って俺の頭を撫でる先輩の顔は、いつもの可愛い顔に戻ってて、やっぱり抱き締めたいと思うんだ。 「あー疲れた。頑張った俺も、和に、よしよしして欲しい」 頭の上で声がしたと思ったら、葵先輩が和先輩の膝に頭を乗せて寝転がった。 「葵、重たいよ」 「ごめんって~」 口では謝りながら、少し頭を動かしただけで、降ろそうとはしない葵先輩。 俺の頭を撫でていた和先輩の手が、葵先輩の髪に触れる。 「葵も、よく頑張りました」 柔らかそうな髪の間を、和先輩の指が行ったり来たりして、満足そうな顔をする葵先輩。 ………なんだよ。よしよしは、俺の方が短かった… 俺の心の声が聞こえたのか、不意に頭を掴まれて、ぐるんと身体が動かされ和先輩のもう片方の膝に頭を乗せられた。膝下の絆創膏が目の前に見える。 片方ずつの足にそれぞれの頭を乗せて、それを撫でる和先輩。 「二人とも頑張りました」 先輩の指が俺の髪をすく。すぐに感じる心地よさと、俺だけにしてくれているわけじゃないモヤモヤが入り交じる。 俺はそっと、髪に触れる和先輩の手を握った。 動きが止まった手をぎゅっと握ってみる。先輩が何も反応しないから、葵先輩は気づいてない。 バスケットボールを握るには少し小さなその手。なんであんなプレーが出来るんだろう。 不意にぎゅっと握り返された手。 …………先輩? コートに向かってる顔を上に向ければ、先輩の顔が見えるのに、俺はわざとそうしないで、黙って手を握っていた。 少し強くなった香り…… 先輩……この手の意味は? 俺……自惚れそうになるよ……
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