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とうとう先輩達、最後の夏が始まった。 俺達の高校は、創立されてからまだ数年しかたってない新しい学校だ。そのせいか、去年もその前も、県大会の予選で敗れている。 ただ着実に順位は上げてきていて、今年はもしかしたらと、皆から期待を寄せられていた。 今日の相手は、同等か少し格上の学校。初日から大事な試合ということになる。 その為か、部員全員が緊張していて固い。まさか、先輩達最後の夏を一日目に終わらせるわけにはいかない。そう思えば思うほど、身体がいつものように動かなかった。 「おーい、なにしてんだお前ら」 不意に二階の観覧席から、聞き覚えのある呑気な声が聞こえた。 「「真冬先輩!」」 みんなの視線が一斉に上を向く。 「今日から始まるんだろう、なに最後みたいな顔してんだよ。」 「先輩、来てくれたんですね」 隣で和先輩が兄貴に声をかける。 「ああ、お前との約束だからな」 見つめ合う二人。 ………なんだよこの雰囲気 「楽しんだもん勝ちだぞ」 兄貴の言葉に、俺の大好きな顔で微笑んだ。 「よーし。みんないくぞ」 和先輩の声と笑顔に、みんなの緊張が和らいだ。 「お前も足を引っ張るなよ」 次々とコートに入っていく背中を見ていたら、上からもう一言声がする。 「わかってるよ!」 俺はチラッと兄貴に視線を送ると、コートに向かった。 俺だって、勝って和先輩を笑顔にしてみせるんだからな…… ピー 試合終了を告げるホイッスル。得点板に並ぶ数字と響きわたる歓声。 勝った……… コート中央で先輩達が手を広げた。 「やったー!!」 抱き合い円陣を組む。 正面にいる和先輩が満面の笑みで、その顔を見たら声を上げて喜びたくなる。 円陣が崩れて、それぞれが肩を抱き合ったり声を掛け合い喜んでいると、俺のところに真っ直ぐに駆け寄り抱き締めてくれたのは、和先輩だった。 「夏希、やったな」 不意を突いて思い切り吸い込んだ先輩の香り………ああ……くらくらする。 これは、おれも思い切り抱き締め返していい場面だよな。 先輩の身体に腕を回し抱き締める。 ………また、強くなった香り 一番に俺のところに来てくれるって、少しは期待してもいいってことだよね。 このまま連れ去りたいと思う俺は、やっぱり重症だ。 先輩が少し身体を離したのが分かって、もう一度だけぎゅっとしたあと、身体を離した。 「予選突破したみたいな喜びかただよな」 そう言う先輩の笑顔に二人で吹き出して笑った。 さあこのまま勝ち進むぞー という俺達の意気込みは、二週間で呆気なく幕を閉じた。
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