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…………あれから8ヶ月
今日は大学の合格発表の日。俺はパソコンの前で、その時を待っていた。
和と同じ大学。正直、俺にとってはだいぶチャレンジで………
それでもめげずに頑張れたのは、和に宣言した二つの事をやり遂げたいと思ったから……
一つ目はバスケ。
最後の大会は、初めて県大会に出場した俺達。しかも二回戦まで勝ち進むという快挙を成し遂げた。
これは俺にとっては大満足の結果。もちろん俺一人の力じゃなくて、皆と勝ち取った成果だけど………
和も当日は大興奮で、熱いキスのご褒美をくれて………
…………って思い出してる場合じゃなかった
そして二つ目の宣言は、和と同じ大学に進むこと。
これは言い訳だけど………県大会に進んだことで、他の受験生よりも少し遅れて始めた受験勉強。
これにはかなり苦戦して………
そしたらなぜか………そんな俺に勉強を教えてくれたのは兄貴で……
県大会が終わったあと、何事もなかったように、勉強をみてくれたんだ。
それは本当に穏やかに………
机に積み上げられた参考書を見つめる。その何冊かは、兄貴から和へ、和から俺へと受け継がれてきたもの。
あの日………
兄貴と出掛けてきた和は、とてもご機嫌で
「今度は夏希と行きたいなぁ」なんて………
結局、俺が恐れていたことは何も起こらなかったみたいなんだけど………
兄貴が、どうして仁さんと付き合ってると仄めかしたのか、本当に仁さんと付き合ってるのか………それは俺も聞けなくて………
肝心の、兄貴の和への想いがどうなったのかも………分からないままだった。
そして、とうとう今日を迎えた。
自己採点ではギリギリのライン。
「………はぁ」
俺は大きな溜め息と共に、机の上に肘をついて顔を手で覆った。
コンコン
部屋の扉をノックする音が聞こえて、返事をしながら振り返ると、兄貴が顔を出した。
「どうだった?」
「………まだ出てないよ」
ゆっくりと俺に近づいて、隣でパソコンの画面を覗き込む。
その横顔を見ながら思う。
兄貴……受験が終わったら、いろいろ話を聞いてもいいかな……
「あ、出たみたいだぞ」
兄貴の声に、意識が別の方を向いてた俺は慌ててパソコンの画面に集中した。
合格結果の場所をクリックして、自分の受験番号を探す。
頼む………
祈るような気持ちで、視線を動かして行く。マウスを動かす手が震えそうで息を止めた。
「……あ…………………あった」
「まじか!何番だ!」
受験票と、画面を兄貴の視線が行ったり来たりする。
「おお!あった!合格だ!」
兄貴が俺の背中をバンバン叩くと、やっと放心状態から動き出せた。
「やったー!受かった!受かったよー!」
立ち上がって兄貴と抱き合うと、声を上げながらその場を回った。
「良かったなー、早く和にも知らせてやれ」
もう一度、俺の背中を叩いた兄貴が微笑む。
「うん!」
俺はスマホと上着を手に持つと、部屋を飛び出した。
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