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旅館の人達の、「今年もいらっしゃってくれて………」なんて挨拶を流すように聞いて、「すみません、夕食は遅い時間にしてください」とそれだけ言って、和の背中を押し込むように部屋に入れた。
スリッパを脱ぐ動作も、もどかしく感じて、部屋の入口からさらに奥の部屋まで和を急かす。
やっと二人きりになった瞬間、和を思い切り抱き締めた。
「………ずっと、こうしたかった」
言いながら名前を読んで、和の顔にキスの雨を降らす。
「……ン……ぁ……ンン」
「…ン…和……好き……ン」
唇を重ねたあとは、ひたすら口内を味わう。
和の香りがどんどん強くなって、止められないキスのせいで息も苦しくなって、酔いそうだ………
部屋の中央へと、和を押し込みながらコートを脱がせ、自分も着ているものをどんどん脱いでいく。
早く………早く……
ずっと我慢して溜め込んでいた想いが、俺を暴走させていくのが分かる。
数秒唇を離す度に、必死で酸素を取り込むように息を吸う和。
踠きながらも、俺に答えようと舌を絡める姿が愛しくて余計に止めてあげられない。
和のカーディガンもTシャツも乱暴に脱がせ、ジーンズのボタンに手をかけると、その身体が強張った。
「…………全部見たい……全部脱いで」
唇を耳元に移動させ、囁いたあとその部分を舌で味わう。
「……俺……ン……ぁ…初めてなんだから……ぁ」
薄々気付いてた………
和は、男は勿論……女の経験もない。
全部の初めてを俺が貰う。
それでも数ヶ月溜めまくった想いは、優しくしたい気持ちを上回っていて………
キスでねじ伏せた身体から、あっさりとジーンズも下着も剥ぎ取った。
一瞬動きが止まる。
男の裸なんて、運動部に入ってれば嫌という程見てきたのに………
和の全身は、今まで見てきたそれとは全く違った。
白く透き通るような肌。華奢な身体なのに実はしっかりとついてる筋肉。薄桃色の乳首と和が必死で隠そうとしてる和自身。
しっかりと形を成しているそれが嬉しくて、俺は和を抱き上げると畳に寝かした。
「……畳、痛くない?」
「……フフ……今さらだな……」
「うん………痛いと言われても、止められない」
「…うん」
「これから………和が泣くようなこともする」
「…………うん……でも俺は泣かないよ。嬉しくて泣くことはあっても……ぁ」
和の話が終わらないうちに、その首筋に唇を寄せた。
思い切り吸い込む香り………
この香りが、俺と和の始まり……
同じように和が俺の首筋に唇を寄せた。
「………あぁ………夏希の香り…」
同じことを想ってる、その事が堪らなく嬉しい。
そう、この香りがお互いを意識させ引き寄せた。お互いにしか感じない香り。
俺はその香りと和を全身で感じたくて、唇を舌を少しずつ移動させていく。首筋から顎へ、唇に戻って鎖骨へ。
暗くなっていく部屋で、お互いの香りが混ざり合い溶けていく………
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