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「体は大丈夫だった?あの日は俺も我慢が効かなかったというか……無茶をしたと思っている」
部屋で待っていてといったのだが、彼は遠慮もあったのか、部屋には入らずに夏が店から出てくるまでコンビニで待っていたようだ。
「私は……私の体は問題ないです。えっと、この間はメロンありがとうございました」
どうぞと鍵を開けると、中へ入ってもらった。
彼はネクタイを緩めた。勝手知ったる様子でベッドに背を預けラグにそのまま腰を下ろした。
夏の部屋は決して広くはないワンルームだ。ソファー等は置ける余裕がない。部屋にお客さんが来ると否応なしに、相手とくっついて座る状態になる。
夏は彼が買ってくれたスイーツやいろんなものを冷蔵庫に入れて、お酒はもういらないだろうと、麦茶を出した。
「君の名前を聞いてなかったし、携帯番号も知らない。話をしなければと思っていたんだが、仕事が忙しくなかなか時間が取れなかった。すまなかった」
「あの……やはり何か副作用みたいなものが出たのですか?どこか体の調子がおかしくなったとか……」
夏に連絡を取りたかったということは、やはり何かがあったんだろう。
「あの媚薬の成分を調べた。毒物的なものは出てこなかった。違法のものも入ってなかった。その事もちゃんと君に伝えたかった」
夏は緊張が解けてホッと胸をなでおろした。責任を感じていたのでそれを聞いて安心した。
「心配でしたし、気がかりだったので。それを聞いて安心しました」
この人はわざわざそれを伝えるために来てくれたんだ。結構良い人なのかもしれない。
「お腹空いてませんか?なにか食べるもの用意しますね」
調子のいいもので、彼が敵ではないと認定したら急に接待しなくては感が出てくる。
まぁ、出すものは、彼がさっき買ってきてくれた食べ物になるわけだけど。
「ちょっとその前に、質問してもいいかな?」
「なんですか?」
「お店にいたマスター?って君の恋人?」
はい?と夏は思わず持っていたサラダチキンを落としそうになった。
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