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「もう関係を終わらせたいです。私はセフレですよね?だって会うたびそれしかしてませんから」
夏ははっきり言う。いつまでもダラダラ関係を続けるわけにはいかない。
「……まぁ」
電話の向こうで笹野さんが息を呑むのがわかる。
「もう笹野さんとは体の関係を持ちたくありません」
「なんで、俺は嫌だ」
「しんどいから」
「そうなの?」
「もう惚れ薬のせいだとか、そんなのは無しでお願いします」
絶対にはぐらかされたりはしない。うやむやにしては駄目だ。
「急すぎだから却下」
「話が通じませんね」
「なんで俺が中国に出張してる時に言うの?」
「会えば流されます。笹野さんのペースになるからです。とにかくもう終わりです」
「……この電話は、電源が入っていないか、デンパの届かない所に……」
「ふざけないで下さい!」
「わかった。日本に帰ったら話をしよう」
「もう……」
「悪いが、今、仕事が追い込みに入っている。大事なところなんだ。来週日本に帰ったら必ず時間を作るから少しだけ待ってくれ」
「……無理です」
流れ落ちる涙が、電話越しでは見えない事が救いだ。最後くらいスッキリ別れさせて欲しい。
「今から1番早い便で帰る。待ってて」
プツンッ……と電話は切れた。
笹野さん。私はもう……東京にはいません。
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