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今まで東京のバーで会っていた。週に一度の割合で、半年間もの間だ。
てっきり東京でなくても近県に職場があると思っていた。まさか関西の兵庫県から通っていたなんて思ってもみなかった。
その距離をものともせず、毎回夏に会いに来ていたのだろうか?それとも仕事が毎週東京であったのだろうか?
いわゆる港々に女あり、ってやつですか?
「笹野さんは、ご結婚されてますよね?」
単刀直入に、夏は笹野さんに確認した。ダラダラ話をして本題に入れなかったら元の木阿弥だ。
「えっ……?」
笹野さんは驚いたように夏を見返した。
夏は恐れていた返事が返ってくる覚悟を決める。そう簡単に既婚者であることを認めないだろう。
「指輪をしていました。最初お店に来られた日、左手に結婚指輪をしてたのを覚えています」
「なるほど、見られてたんだね」
目の奥が熱くなる。絶対に泣かないと夏は眼光鋭く笹野さんを睨んだ。
「既婚者の方としっていたにも関わらず関係を続けるわけにはいきませんでした。今もその気持ちに変わりはありません」
「それは正しい考えだ。一般的にはだけどね」
笹野さんは優雅にシュリンプサラダのエビを口に運んだ。彼は動揺している風には見えない。
「どういう意味でしょう?」
この落ち着いた雰囲気はなんなの?開き直ったか笹野さん。
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