媚薬

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媚薬

どうしてそうなったか全く分からないが、さっき川端さんからもらった「スーパーデラックス媚薬」がカクテルに入ってしまった。しかも全部投入したようだ。 それに気がついたのはイケメンのお客さんが会計をすませて帰ってしまった後、片付けも終わろうとしていた時に、空になったその媚薬の瓶を発見してしまったからだった。 『これはまずいどうしよう』と夏は一瞬で青ざめた。頭は真っ白。 もしかしてどこかで倒れているかもしれない。心臓が止まってたりしたら、殺人犯になってしまうんじゃないか。お酒と一緒にのんでも大丈夫なんだろうか? 落ち着け自分。大丈夫川端さんは体に有害なものは入っていないと言っていた。 生ゴミの袋をまとめながら裏口まで持って行く。彼が帰ってしまってから30分は経っている。調子が悪くなったら何か知らせが来るだろう。あのお客さんは店の名刺を持って帰ったし、帰りには機嫌よくありがとうとお礼を言って出ていったではないか。 一応使用説明書を読まなければ、そう思い急いで裏通りにゴミを捨てる。 この店の2階に夏は部屋を借りていた。格安で貸してくれる代わりに暇な平日の閉店業務を任されていた。 急いで部屋に帰ってあの媚薬の取説を読もうとゴミ置き場からもどる時、見覚えのある後ろ姿を発見してしまった。 電柱の下にうずくまるその人影はまさしく先程のお客さん。気分が悪くなり、もどしているようだった。 知らない振りはできない。全て自分の責任だ。 「お、お客様……大丈夫ですか?」 できるだけ声が震えないように冷静に話しかけた。 「すまない。どうも酔ってしまったようだ」 話すのも辛そうだ。背中をさすって彼が少し落ち着くまで待つ。 「よろしければ2階に部屋があります。休憩していってください」 彼に肩を貸して二階の自分の部屋まで連れて行った。足を引きずるように彼はよろよろと夏の部屋まで上がってきた。
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