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新郎と義父
「ふぅ、流石に疲れたなぁ」
玄関で荷物を下ろし居間の畳に寝転がると、僕は大きく伸びをした。
「ちょっと、スーツがしわになっちゃうわよ、とりあえず脱いでからくつろいで!」
真由は慌ててハンガーを取りに行く。
「はいはい、奥さんの仰せのままに」
僕はよっこいしょと起き上がった。
早くにお母さんを亡くし父子家庭で育った真由はほんとにしっかり者だ。
口の悪い友達には「お前が真由ちゃんと結婚したらすぐ尻に敷かれるぞ」なんてからかわれたけど、優柔不断で踏ん切りの悪い僕には真由くらいの姉さん女房が丁度いいと思う。
「いい結婚式だったよね」
真由が僕の上着を鴨居に引っ掛けながらしみじみと言った。
「うん、いい結婚式だった。みんなに祝福されて、とうとう僕たち夫婦になれたんだね」
言葉にすると実感が湧いてくる。
僕は真由に近づくと後ろからそっと抱きしめた。
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