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迎え梅雨のトマトサバカレー
小学校から家に帰るためには、大きな角を二度曲がる必要がある。
雨の日、私はその角を曲がるのを何より楽しみにしていた。
今日は雨だからカレーですよ、メイカ。
2つ目の角を曲がると聞こえてくるのは、滑舌のいい祖母の声。鼻孔をくすぐるのはカレーの香り。
誰もが鬱陶しがる梅雨も秋の長雨も、私にとっては恵みの雨だ。
校庭をしっとり濡らす雨をみるたびに、幼い私の心は浮き立った。今日はカレーだ。と、足踏みをしたくなるほど嬉しくなる。
海やプールは楽しいのに、同じ水でも雨って何でこんなに鬱陶しいんだろう。と眉を寄せる同級生を横目に、私は1人で笑顔だった。
帰りの会が終わった瞬間、私は誰より早くに片づけを済ませて学校を飛び出したものだ。
海よりもプールよりも私にとって魅力的なのは、祖母の作る特製カレー。
そうだ。祖母のカレーはいつも、海のような複雑な香りがした。
「お疲れ様です」
そう言いながら、私はそさくさとノートパソコンの重い蓋を閉じる。
カレーが大好きだった幼い少女は、10数年の時を経て立派な大人に成長した。
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