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ピアノ練習方法についての研究その1~基礎に甘えない~
「テニス部で一年間玉拾いをしつつ、基礎の素振りを続けた」
「寿司職人は3年間の基礎の下積みが必要」
日本人はこういった話題には事欠かない。
ピアノにも定番の基礎メニューが存在する。ハノンと呼ばれる教本だ。
「毎日一時間欠かさず基礎のハノンを練習する」
この言葉はピアノの練習者を魅了して止まない。その理由を考えてみよう。
人は安易な方向に流れる。これは本能だ。そして基礎練習は楽である。その楽な基礎を練習するだけで、総合力が向上するならばこれほど楽な事はない。
心情的にはこういった理由で、ほとんどの日本人が基礎に甘えたがるのであろう。
なぜ基礎に甘えると危険なのか、その理由を考えるために一度基礎という言葉の意味を考えてみよう。
私の国語辞典には
・構造物の本体をその上に載せて支えるために、下部に定置する物。
・物事の土台となる大事な部分
という説明がある。
参考になるのは2番目の定義だろうか
これを技術向上を考察する上で、わかりやすい定義に私が置き換えるとこうなる。
基礎:『応用に含まれるもの』
物事の土台となるという性質は、言い換えると応用に含まれるという事である。
こう定義した上で考察する。
私は10分程度でスケール、ウォーミングアップ用の曲と初見練習を済ませた後、すぐに難易度の高い応用練習に移る。
これで自分の能力に見合った負荷をかけ、能力を伸ばす事が出来る。応用にも基礎は含まれるのであるから、進みながら自然に基礎も固める事が出来る。
開始10分後に難易度の高い練習をする事には意味があって、丁度一番調子が出る時間帯だからである。
一時間ハノンに甘えるといった方法は間違ってもとらない。開始10分後に訪れる調子が出やすいタイミングに惰性と甘えで基礎練習をこなす。
これは究極の時間の無駄使いだ。楽にこなせるメニューをやって力が伸びる事は無いからだ。
これは筋トレで例えるとわかりやすい。100キロの重りを持てる人間は少なくとも60キロ以上の重りでトレーニングをしなければ、100キロ以上の重さを持てるようにならない。
アクセントをつけてスケールを引く、アルペジオのリズム練習、3度のレガートの練習等は30キロの重りである。
こういった練習をいくらやっても例えばトルコ行進曲の左手やラ・カンパネラの右手は弾けるようにならない。
固めるのでは無く伸ばす、伸ばす意識が無ければ力はつかない。基礎練習というと大喜びする教師が多いから、教室に通っている人は特に注意が必要だ。
固めるのでは無く伸ばす、伸ばす意識が無ければ力はつかない。基礎練習というと大喜びする教師が多いから、教室に通っている人は特に注意が必要だ。
次のレベルに進むタイミングとして私は6割か7割という感覚を大切にしている。
ある段階の曲が7割こなせたら、その曲を8割、9割に固めるのではなく、上のレベルの曲に移る。
上のレベルの曲をメインに練習しながら一度やった下のレベルの曲をサブで練習し、8割、9割に上げていく。
これは練習の最大の敵である心的飽和、つまり飽きを防ぐ意味でも重要である。
固める練習ばかりしていると、よほどピアノが好きな人間以外は飽きてフェードアウトしていく。
応用にも基礎は含まれるのであるから、上のレベルの曲が下のレベルの曲の復習にもなる。
ピアノは攻めの楽器だ。攻撃は最大の防御という胡散臭い言葉は、こんな所でリアリティーを持つ。
ハノンの第一部やスケール、アルペジオ、3度はキツい練習に疲れた時にちょっとやる程度で技術を維持できると付け加えておく。
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