57:宝物のように残ってほしい

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 次郎君の手から逃れて、カバさんがふよふよとジュゼットの膝の上に乗っかる。お腹の中にあるものを持って、どこかに逃げ去るような素振りはない。  ピンクのカバのぬいぐるみのまま、うっとりと大人しくなった。 「カバさんって、どうしてそんなにジュゼットの味方なの?」  方法論は途轍もなく間違えているけれど、いつもジュゼットのことは(おもんばか)っている。 「味方? ようわからんけど、姫さんが笑うと面白いからな」 「面白い?」 「そやな」  わたしには理解できそうにもない。カバさんの行動基準は面白いか面白くないか。  二択で成り立っているのだろうか。 「まぁ、いちばん面白かったんは、イチローやけどな」  次郎君が鬼のような形相をしているけど、無理もない。わたしも冷ややかな目でカバさんを見てしまう。それきり大人しくなったカバさんから、瞳子さん作の豪華な重箱弁当に意識を向けた。ジュゼットと次郎君にお弁当を取り分けて、卵焼きをほおばる。  甘めの味付けは優しい。  わたしは砂浜のはるか向こう側まで行ってしまった二人の影を、視線で追った。寄り添うように重なる影。
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