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次郎君の手から逃れて、カバさんがふよふよとジュゼットの膝の上に乗っかる。お腹の中にあるものを持って、どこかに逃げ去るような素振りはない。
ピンクのカバのぬいぐるみのまま、うっとりと大人しくなった。
「カバさんって、どうしてそんなにジュゼットの味方なの?」
方法論は途轍もなく間違えているけれど、いつもジュゼットのことは慮っている。
「味方? ようわからんけど、姫さんが笑うと面白いからな」
「面白い?」
「そやな」
わたしには理解できそうにもない。カバさんの行動基準は面白いか面白くないか。
二択で成り立っているのだろうか。
「まぁ、いちばん面白かったんは、イチローやけどな」
次郎君が鬼のような形相をしているけど、無理もない。わたしも冷ややかな目でカバさんを見てしまう。それきり大人しくなったカバさんから、瞳子さん作の豪華な重箱弁当に意識を向けた。ジュゼットと次郎君にお弁当を取り分けて、卵焼きをほおばる。
甘めの味付けは優しい。
わたしは砂浜のはるか向こう側まで行ってしまった二人の影を、視線で追った。寄り添うように重なる影。
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