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二人は寄り添うように近づいたまま、ゆっくりと波打ち際を歩いていた。
「時間が許すまで、ゆっくり語り合えばいいんだ。何も考えずに」
向こう側の二人を見つめていた次郎君の視線が、こちらに戻ってくる。
目があうと、わたしも頷いた。
一郎さんがどんな答えを出すのかは、はっきりしていない。
でも、もう答えはわかっている気がした。
きっと瞳子さんの想いに寄り添う決断をするだろう。
「トーコは悲しくないのですか?」
ジュゼットの胸には、ピンクのカバのぬいぐるみが抱かれている。
変わらずポッコリと膨らんだお腹には、この世界の命運を決める世界の欠片が入っている。
カバさんがそこに居るのかどうかは、ぬいぐるみが動かなくなってしまうとわからない。
「悲しいと思うよ、それは」
「でも、トーコはずっと笑っています。自分だけがいなくなるかもしれないのに……。あんなに大好きなイチローに会えなくなるのかもしれないのに」
ジュゼットには複雑なことなのかもしれない。
わたしは瞳子さんの気持ちをわかってほしくて、言葉を選ぶ。
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