57:宝物のように残ってほしい

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「そうなんか。……ほんだら、まぁええか」  次郎君が身を乗り出して、ぐいっと浮遊するぬいぐるみを掴んだ。 「おまえは、何を企んでいるんだよ」 「そないピリピリせんでもええがな。別に何も企んでへんわ」 「嘘つけ」 「疑り深いやっちゃなぁ」  次郎君の態度は、これまでのカバさんの所業を思えば当然のことだけど、カバさんには伝わるはずもない。 「ワシは一郎と一蓮托生って言うたやろ。一郎が決めたことには抗わへん。そもそもあいつが望んだら、ワシはすぐに嘔吐やで」 「嘔吐?」  それって、お腹の中の世界を吐き戻すという意味だろうか。 「それに、ワシはついでに姫さんの願いも叶ったらええなって思ってただけや」 「ジュゼットの願い?」 「二度と帰りたくないって言うてたからな。世界がなくなったら、ちょうどええやんって」  やっぱり根本的にカバさんとは思考回路が違う。  お家に帰りたくなかったら、世界をなくしてしまえばいい。  どんな狂人の発想だろう。 「でも、そうか。姫さんは帰りたいんか」
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