57:宝物のように残ってほしい

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 もう何かを偽ることはなく、想いを伝え合えるはずなのだ。  一郎さんと瞳子さんは、通じ合った気持ちで何を語り合っているのだろう。  黄昏に光る波がキラキラと輝いている。まるで想い合う二人を祝福しているかのように切なく美しかった。  波打ち際に立つ二人。絵画のように綺麗な情景。  忘れたくない。  いつか瞳子さんが教えてくれたように。 (全てがなかったことになっても、気持ちは残っているんじゃないかって。結びつく記憶がなくなっていても、心の中にだけは、何かわからないまま、でも宝物のように残っているんじゃないかって)  できればそんなふうに心に残ってほしい。  今、この瞬間の気持ち。  宝物のように。  そう願わずにはいられなかった。 ――AD(全次元)、カウントダウン。 ――1。
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