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灯真ver. 再会...
大学の講義が思いの外、長引き、急いで明文が指定していたカフェへと急いだ。
明文は大学は違うが、俺、早川灯真のセフレ。
息を切らしながら、ドアを開けると、真っ先に明文の座る席を探した。
「こっちこっち、灯真。おっせーよ、ったく」
「ごめん、急いでは来たんだけど」
未だに呼吸が整わず、正面に座り、ウェイトレスが運んでくれた水を一気飲みした。
「で、どうする?今日は俺んち来る?お前のマンション?」
「んー...どっちでもいい、てか、その前に軽く腹ごしらえしときたい、互いに料理、得意じゃないんだし」
そうして、テーブルに置かれてあるメニューに視線を落とす。
「明文はここ、来たことあんの?おすすめは?」
「ああ、三回目かな、偶然見つけたんだけど、ウェイターがさ、なかなかイケてて、安くて美味いし、目の保養にもなるからさ」
思わず悪態の溜息をつく。
「そんなおすすめは聞いてはないっての」
「ランチプレートとかは?今日のメインは...和風ハンバーグか」
「和風ハンバーグか、悪くないな」
不意に、俺たちの座る席の横にウェイターが立つ気配があった。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ、この....」
見上げて、俺は言葉を見失い、視界はそのウェイターに奪われた。
「....灯真?灯真だよな、久しぶり。元気にしてたか?」
....まさか、再会してしまうなんて。
二度と会うことなんて無いと思っていたのに....。
「なんだよ、灯真、知り合い?」
明文が尋ねる声も遠い。
「....ランチプレート、二つで」
「飲み物は?そこのメニューの中から選べるけど」
「....なんでも...いや、コーヒーで」
「アイス?ホット?」
「....アイスで」
明文はホットコーヒーを頼んだ。
「もうすぐバイト終わるんだ、少し話せないかな?」
「....ごめんだけど、用事がある」
「別にいいじゃん、灯真、俺も話してみたいしさ」
く、と俺は向かいの明文を睨みつけた。
お目当ては、この、隼一か。辰上隼一。
....俺が昔、好きだった人。
勝手に片思いして、傷ついた、それだけだ。
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