始まりの春

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周りを見渡すと過半数の好意的な声に混じり否定的な声も聞こえる。聞こえなかったことにして急遽用意されたのであろう真新しい机に座ると今朝の男、確か夏…鳥?が話しかけてくる。 「俺夏鳥太陽、さっきの子でしょ?俺のクラスだったんだ!うれしい」 「太陽うるさい」 そうつぶやくのは夏鳥くんの後ろの学級委員、冬月雪斗くんだ。 正直な彼と厳しそうな学級員、個性の強い面々に囲まれ息つく間もなく授業が始まる。さすが進学校、授業は前の学校より遥かに進んでいる。 物珍しいのか教師たちはどの授業でも私に質問する。中には答えられない、と踏んで難問を出す嫌味な数学教師も居た。 もちろん数学は得意だし、不正解なのは癪なので心を読んで完璧に正解してやったが。そんなこんなで午前の授業が終わり皆の視線から逃げるように紅葉の元へ向かう。 約束していたのだ、転校初日のお昼中庭で会おう、と。途中案の定道に迷い到着したのは集合予定のの5分後。 この学校で私のことを一番理解しているのであろう紅葉は「また迷ったの?私迎えに行けばよかったねー」と笑う。 私は桜の刺繍の入ったお弁袋を広げ弁当を、紅葉は購買の袋からコロッケパンとハムサンド、それに野菜ジュースを出す。 「相変わらず弁当小さいね−足りないでしょー」《こころ細いから心配》 「足りるよ、紅葉と違って」 なにそれーと笑い合う中学の日常が戻ってきたようで頬がゆるむ。 「ふぉういへはなんれへんほうしてきらの?」《なんで転校してきたんだろ》 「紅葉飲み込んでから喋って。」
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