プロローグ

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プロローグ

 ここは、東の国の外れにある山の麓の小さな村。古来より一番最初に太陽が昇る地と呼ばれており『山神様』が住まう山として人々から崇め祀られている。  この地には決して破ることの許されない伝承があった。 一、山で名を呼ばれても振り向くべからず ニ、山神様を名で呼ぶべからず 三、山神様の顔を見るべからず 四、山神様と盃を交わすべからず  なぜなら、山神様は人を喰らう神だから。  けれどー……  僕にはそんなことはどうでも良かった。 「(あお)こちらへおいで」  誰にも呼ばれなくなったこの忌まわしい名を、貴方が優しく呼んでくれたあの瞬間からー……  僕は、貴方だけのもの。  だから、僕は禁忌(きんき)を犯す。  全ては、あなたに黎明を捧ぐため。
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